芳文社70周年記念セールで買った漫画の感想(その1)
芳文社70周年記念ということで対象商品が1冊77円のセールが7/10から7/16まで開催されました。
このビッグウェーヴに乗り、私も対象作品をいくらか購入させていただきました。
これが俺の答え家 pic.twitter.com/GPwDcdQ38q
— 強い気持ち・強い愛🍟 (@FliedPotato) 2020年7月16日
本記事は今回購入した作品群のうち一番最初に読んだ3作品についての感想記事になります。
また、今回のセールで買った漫画の感想記事についてはシリーズ化して投稿したいと思っています。
なので、今回で終わるってことなく続きがこれからもあると思います。うん、きっとね。
それでは、以下、綴っていきたいと思います。
ぼっち・ざ・ろっく! 1巻
極端に人見知りな主人公である後藤ひとり(通称:ぼっちちゃん)が、ひょんなことから自身が所属することになるバンドである「結束バンド」のメンバーやライブハウスの店長など周りの登場人物との関わりを通じて新たな世界へと踏み込んでいく物語。
きららセールの対象が1巻だけということで、ひとまずこの1巻のみ購入して読みましたが、これはすぐに2巻も読まなければいけないと感じました。
ぼっちちゃんの過去について、孤独な中学生活を過ごしたということは作中で言及されているのですが、第1巻の時点ではその細かい描写はほとんどありません。
しかし、この一般的な高校生女子とはあまりにかけ離れているであろうネガティブかつダークな性格を獲得するにはおそらく相当壮絶な中学生時代があったのだろう・・・という想像も膨らんでいき、そこも楽しめるポイントの一つなのかなと思ったりします。
「肝臓売りに行かなきゃ・・・」というワードが咄嗟かつナチュラルに出てくる高校一年生女子、その裏には一体どんな人生があったんだ。
ベースの山田リョウが「友達がほとんどいない」と言い、ぼっちちゃんが一瞬仲間意識を持ちかけるも、諸々聞いて「一人でいるのが好きな人なんだ・・・」と悟り落胆するシーンは数あるネガティブ描写の中でも特にリアルだと感じました。
それを望んでいるわけでは全然ないんだけど極端に交友関係が希薄だったりあるいは全くなかったりする人(私自身のことを言っているかどうかは皆さんの想像にお任せします)にとって、本当に羨望の対象となるのは「友達や仲間にたくさん囲まれている人」よりも「一人でいることを自分から能動的に選択できる人」というのはあるあるなんじゃないかと思います。
そんな心理を見事に突かれた気がしてついハッとしてしまいました。素晴らしい描写だと思います。
「ギターヒーロー」としてインターネットでは人気を博していて、一人での演奏技術には卓越したものがあるのに、バンドとしての演奏になると途端に下手になるという設定もとても良いですね。
本来ポテンシャルはあるはずなのに、環境であったりメンタルであったりあるいは運の問題であったりでそれをうまく発揮できていないと深層心理の中で思い込んでいる、あるいは思い込んだことのある人はオタクの皆さんならば少なくないのではないでしょうか(一方的な決めつけ)。
そのような心理をくすぐられ、つい共感してしまうとても良い設定だと思います。
ぼっちちゃんのそのキャラクターから来るネガティブギャグ漫画的な側面も強いですが、「演奏」という要素にも同じくらい、あるいはそれ以上に重きを置かれて描かれています。
特に、13話ラスト直前の、ぼっちちゃんが一歩踏み出した見せ場の演奏シーンはひたすらにジーンと来ました。
まさに「新しい世界」へ足を踏み入れた瞬間であると言えると思います。
ちなみに、ぼっちちゃんが属することになる「結束バンド」のメンバーの苗字の元ネタが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーの苗字であることには読んでいる最中全く気づきませんでした。
同バンドの「転がる岩、君に朝が降る」の曲名をもじったツイートを2年ほど勝手にさせていただいている身としては少しばかりの悔しさがあったりなかったりします。
がんくつ荘の不夜城さん 1~3巻
引きこもりがちな漫画家・不夜城(ふやじょう)よどみと、隣に引っ越してきた女子中学生・白仙(はくせん)あかりや担当編集・羊ヶ丘眠(ひつじがおか ねむ)などとの日常を描く物語。
メタフィクション的な色合いが強い作品で、特に「まんがタイムきらら」に関するネタが多数出てきます。また、主人公である不夜城さんは作者である鴻巣覚先生自身がモデルとして反映されているのも間違いないと言えるでしょう。
漫画業界あるあるのネタも結構多いです。ある種お仕事系漫画と言ってもいい作品だと思います。
かわいいキャラクターがとにかくたくさん出てくるので、どの登場人物同士の関係に萌えを感じるかは人それぞれで多いに分かれると思いますが、個人的には不夜城さんと元アシスタント・ジーニャの師弟同士の関係が一番好きですね。
デビューしてすぐ売れっ子漫画家になったジーニャに対して不夜城さんは引け目を感じているんだけど、ジーニャの方は一切変わらず師匠としてリスペクトをしていて・・・という、ある種の面倒臭さもあるのだけどそれ以上に尊い関係性だと思います。
メタフィクションの構造を巧みに利用したラスト2話の展開は本当に見事でした。
最終巻の「あとがき」で全力を出し尽くしたという旨のことが書かれていますが、その言葉に一切の偽りがないのは間違いないでしょう。
ななかさんの印税生活入門 1~3巻
Twitterのフォローイングの一部でマニアックな人気を誇る印象のkashmir先生の作品。
本作品が私にとって初めてのkashmir作品です。
およそきらら系漫画単行本らしくない表紙がまず印象的。
オーム社から出ている「マンガでわかる!」シリーズの理工書をどこか彷彿とさせます。
メジャーではない漫画家の両親を持つ主人公・ななかさんが、「小説家になろう」を彷彿とさせる投稿サイトでのWeb小説で一発当てて印税収入生活を目指すことから始まる話。
内容としてはこの一発当てるまでの過程を描くというよりは、主人公・ななかさんの明らかに偏見が混じりながらも、本人としては飄々としながら至って真面目にライトノベル(主に異世界系)の「あるある」について語るというのがメインなのですが、この一連の様子がとにかく面白い。
この「あるある」を描くための、異世界系ライトノベルの舞台設定やキャラクター設定についての分析はなんだかんだでとてもしっかりしています。
「小説家になろう」で異世界転生系小説を執筆するための参考書的な役割も、ある種当作品は果たしていると言えるのではないでしょうか。
また、「kashmir先生の作品は不条理でシュールなものが多いがこの作品はそれが大分抑えられマイルドな印象」といった感想を本作品読了後あらゆる感想・レビューサイトで見かけました。
先述の通りkashmir作品は本作品が私にとって初めてであまり多くは語れませんが、それでもななかさんの偏見ネタの数々には、作者の持ち味である「不条理」や「シュールさ」の趣が少なからず反映されているのだろうと感じました。
主人公のななかさんも含めて、登場人物のキャラクターもとても良いですね。
みんなどこか抜けていたりエキセントリックな部分があるんだけど、全員憎めないし、一人一人違ったタイプのかわいさでみんな漏れなく好きになってしまいました。
そんな登場人物たちがわちゃわちゃするシーンも多々描かれるのですが、その様子はとてもキラキラ輝いていて眩しくて……というような感じでは確実にないのだけれど、なんだかずっと見守っていたくなるんですよね。
ひたすら見守り続けても疲れることなくずっと癒やされ続けるんだろうなという、そんな安心感(?)があります。
ななかさんが小説を上げる度にWeb小説投稿サイトや周りの仲間からの評価がトントン拍子に上がっていき、最終的には出版社から書籍化を打診されるほどにまでなるのですが、ななかさんの偏見ネタの数々は別の見方をすれば小説を書く人間としての着眼点の鋭さ(=才能)を示しているわけで、なるほどそうだろうなーとすっきりした納得感がありました。
ななかさんの小説執筆自体の描写は作品中ではほとんどないながらにして、このトントン拍子についての違和感を与えないというのはかなりすごいと感じました。
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おわりでーす(三四郎・小宮)
今年に入って上げたブログ記事はこれで4本目になりますが、「慣れ」という感覚は依然として体感できません。
いつになったら「慣れ」を体感できるのでしょうか。
もしかしたら永遠に体感できないものなのかもしれません。
だからこそ面白いものなのかもしれませんね。