かさぶたぶたぶ傘ブタ

BUMP OF CHICKENの楽曲で歌詞に物語性のある楽曲と聞かれて、皆さんはどの楽曲を真っ先に思い浮かべるでしょうか。

ガラスのブルース」「K」「Ever lasting lie」「ラフ・メイカー」「ダンデライオン」「車輪の唄」

・・・挙げればキリがなく、おそらくその答えは人によって千差万別となるでしょう。

こと私について言えば、真っ先にこの曲を思い浮かべます。

それが、「かさぶたぶたぶ」です。

かさぶたぶたぶ

かさぶたぶたぶ

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2007年発売のアルバム「orbital period」収録。

先述の楽曲達に比べると、知名度はやや劣るかもしれません。

ですが、本記事ではとにかくこの楽曲を推していきたい。

 

NHKの「みんなのうた」で流れている様子が想像できるような、かわいらしさとちょっぴり遊び心の入った曲調が特徴です。

実際に「みんなのうた」に起用された「魔法の料理~君から君へ~」よりも、こちらの方がみんなのうた要素が強いと感じる方も少なくないかもしれません。

 

歌詞の内容は、友達と喧嘩をした男の子がその時に膝小僧を擦りむいてできた「かさぶたくん」の目線から、その傷が治るまでの過程を描いたもの。 

体育の授業の最中や友達と鬼ごっこをした時にこけたり、あるいは本楽曲の歌詞のように友達と喧嘩をしてその際に転んだり・・・と、何かしらのきっかけで膝小僧を擦りむきかさぶたをつくる経験をするのは、生きていればほとんどの人が、しかも何度もあると答えるのではないでしょうか。*1

この楽曲は、そんな誰しもが必ず経験するであろう「かさぶたをつくる」という出来事をベースにしているという点で、先ほど挙げた楽曲も含めた、数あるBUMP OF CHICKENの物語形式の楽曲の中でも中々ないパターンの楽曲と言うことができると思います。

そんな普遍的なシチュエーションを基に、しかも物語は怪我をした男の子の視点ではなく、その男の子が膝小僧を擦りむいたことによってできた「かさぶたくん」の視点から進んでいく。

作詞をした藤原さんにはこういう着眼点もあるんだと、あらためて驚かされるばかりです。

 

「傷」という言葉が歌詞中では度々出てきます。

この「傷」というのは、歌詞中の男の子がその友達と喧嘩したことによってできた心の傷と、男の子が膝小僧を擦りむいたことによって生まれたかさぶたくん自身の両方を示していると言えるでしょう。

いつか「傷」は治ってかさぶたくん自身も消えてしまうことはわかっているはずなのに

「大丈夫だよ 傷は治るんだ きっと もとどおり」

「だから言ったろ傷は治るよって もとどおりになるって」

「さよならだよ仲良くやれよ僕のことは気にするな」

といった、友達とも仲直りして「傷」も治るよう、あくまで男の子のことを思いやり励ます言葉を贈り続けるところに感動と、かさぶたくんのイケメンっぷりを感じますね。

 

「短い間だと思うけどここは任せとけ」

「ねぇ気付いてる?少しずつ僕が小さくなってる事」

など、いずれはかさぶたくん自身もいなくなってしまうということを示唆する、終わりを予感させるフレーズが度々出てくるところも特徴的で、哀愁を感じます。

 

でも、この一連の語りかけはあくまでかさぶたくんの一方的な心の声であって、その声は一切男の子には届いてはいないというところに、本当はこの物語の一番の切なさがあるのだと思います。

 

ここまで書いていると切なく泣ける要素が強い楽曲のような印象が大きいかもしれませんが、サビの「かさぶたぶたぶかさぶた~♪」というフレーズのちょっぴり気の抜けた合唱*2によってコミカルな面も強調され、良い意味で気軽に聴ける作りになっています。

 

藤原さんのボーカルもこの曲の魅力を成り立たせる上では外せません。

ある部分ではそっと語りかけるように優しく歌い、ある部分では力強く歌い上げる。

かさぶたくんの持つ優しさと明るさが藤原さんの歌によってより引き立てられています。

かさぶたくんに命が与えられているという表現をしても良いのかも知れません。

 

自分のことは二の次で、ひたすらに男の子思いのかさぶたくんでしたが、最後には

「また会える日が待ち遠しいけれど」

「でもたまには転んで転んでもほしいな」

といった、少しばかりの本音をのぞかせる言葉が出てくる。

ずっと男の子のことを第一に考えてきたかさぶたくんだからこそ、このような言葉が聞けるのは少しばかり安堵も覚えますね。

 

◆◆◆◆◆◆

今回は、そんな「かさぶたぶたぶ」という楽曲についてのお話でした。

この曲を聞いて人生観が変わったとか電流が流れるような衝撃を受けたとか、ほとんどの人にとってそういうインパクトがあるタイプの曲ではおそらくないのだけれど、つらい時に背中をさすってくれるような、それでいて最後には肩をポンと叩いて励ましてくれるような、そういう優しさがある曲だと思います。

そんな優しさを持つこの楽曲が、初めてこの曲を聴いた中学生の頃に比べて最近明らかに身に染みるようになったなと感じていて、これが歳をとるということなのだろうか・・・などとたまにふと考える今日この頃です。

*1:ちなみに私もつい最近、最寄り駅の階段を上がっている最中につまづいて膝小僧を擦りむきました

*2:BUMP OF CHICKENの各CDの隠しトラックのような趣も感じます