東野幸治の幻ラジオにハマっている話

世界的に猛威を奮っているCOVID-19の影響により、様々な業界が甚大なダメージを受けている中、お笑い業界ももちろんその例外ではなく、むしろその最たる例と言えるでしょう。

日本のお笑い事務所でナンバーワンの規模と言える吉本興業も3月頃から直営劇場やその他主催のイベントを休止しており、現在においては少しずつ活動再開のニュースも出ているものの、通常営業には明らかに程遠いと言えるのが現状です。

そんな中においてメインの活動拠点をYouTubeに移す吉本芸人が急増しており、師匠・大御所クラス以外の芸人のほとんどは自身のチャンネルを所持している状況となっています。

もっとも競争も激化しており、大物クラスの芸人であっても 内容によっぽどの斬新さ・面白さがないと一瞬でも注目を浴びるのは非常に厳しい状況になっていると言えるでしょう。

 

 

そのような群雄割拠の芸人YouTube界において、私が毎回更新を楽しみにしているチャンネルがあります。

お笑いタレント・司会者として芸能界の第一線を走っている東野幸治氏のYouTubeチャンネルです。

https://www.youtube.com/channel/UCSK4Ikp1v5WPe30pTJVe6Zw

 

 

同チャンネルは、東野氏による、音声静止画のみをひたすらにアップし続けるラジオチャンネルです。

所属事務所である吉本興業は一切関与しておらず、プロモーションおよび編集は長女(通称:娘D)に一任し、二人三脚で運営されています。

 

内容としては毎回の話題に沿って東野氏が思いついたことを一人ひたすらに喋り続けるもの。

中々テレビでは見られない淡々としたローテンションな口調で、しかし一切隠す気のない悪意たっぷりに語られるおもしろエピソードの数々についドハマりしてしまいました。

 

一般にお笑い芸人(特に吉本興業所属)のYouTubeチャンネルと言えば、そのチャンネル担当としてスタッフ何人かが入り、凝った企画・編集がなされる動画がほとんどです。

しかし、東野氏のYouTubeチャンネルの動画について言えば、自身の家のリビングで一人淡々と喋って録音した音声を毎回「東野幸治の幻ラジオ」というタイトルロゴが書かれただけの静止画に乗せているだけのもので、非常にシンプルかつ手作り感満載の内容となっています。

突出して売れている芸能人を称して「テレビで見ない日はない」という形容表現が使われることはよくありますが、東野氏もそれに値する売れっ子ぶりでしょう。

そんな東野氏が、先述のような手作り感満載の動画をチャンネル開設当初から一切スタンをを変えず上げ続けているというその事実自体がまず面白いし、一周回ってむしろ新しい。

また、東野氏が誰もいない家のリビングで一人淡々と喋り続けているというその様子一本のみを想像するだけでなんだか幸せな笑いがこみあげてきます。

 

なお、このような手作り感満載のスタンスでやっているのには理由はあり、お笑いコンビ・ダイアンの津田氏にオススメされたアニメ「映像研には手を出すな!」に見事にハマり、同作品内での登場人物達が手作りでアニメを作っていくその物語に感化され、自身も手作り感を押し出してやっていこうという考えに至ったとのこと(第1回:「東野幸治YouTubeを始めたいくつかの理由」より)。

52歳にして最新のアニメに影響され何か新しいことに挑戦するこの行動力は明らかに常人離れしていると言えるでしょう(もちろん良い意味で)。

 

オススメの回を3つ紹介し、本記事は終了としたいと思います。

①【第21回】東野 VS クレーマー


【第21回】東野 VS クレーマー

 

東野氏が毎週日曜日出演しているワイドナショーの感想を東野氏のSNSにダイレクトメッセージにひたすら送り続けるクレーマーとの3ヶ月に渡るやりとりをひたすらに話し続ける回。

東野氏に対するクレーマーの上から目線なダメ出しがメインと見せかけつつ、クレーマーのダイレクトメッセージの中には他のワイドナショー出演者やその他芸能人に対するディスが多々あり、それをそのまま読み上げることで弄り倒すというこっちのほうが実質メインとなっているという、東野幸治の悪意が全面に出ている最高の内容。

クレーマーのダイレクトメッセージの読み上げる時の演技がかった話し方がその面白さをより増幅させています。

クレーマーの上から目線なダメ出しも全く的はずれなわけでないのもまた面白い。

このクレーマーに対して終始低姿勢に接しているその真意が、この口は悪くもやたらにワードセンスに溢れたクレーマーからひたすらに言葉を引き出し後でこのやりとりをネタにしてやるというその一心であろうことに、東野幸治の持っているサイコパス性が良い意味で遺憾なく発揮されていると思います。

 

【第32回】アップデートして行こう

youtu.be

 

各種メディアにおいて年々コンプライアンスが厳しくなってきており、かつてならば大きく取沙汰されることはなかったであろう発言・放送内容においても多数の批判が寄せられ「炎上」が起きるようになりました。

本動画は、そのような時代であるからこそ、これまでの考え方の「アップデート」を行っていく重要性を訴える内容となっています。

もっともコンプライアンス規制の厳格化のこの風潮を手放しに受け入れるわけではなく、東野幸治流に皮肉を交え、しかし確実に笑いに昇華しながら、あくまで「これからの時代を生きていくため」という戦略的なスタンスを崩さないまま一貫して崩しません。

しかし例え表面上であっても考え方・価値観を「アップデート」していくのは中々難しいことではないでしょうか(年齢を重ねていけばいくほど尚更に)。

東野氏が競争の厳しい芸能界を現在に至るまでずっと生き抜くことができているその理由がはっきりわかる回ではないかと思います。

また、東野氏が2020年冬放送というかなり直近のアニメである「映像研には手を出すな!」に影響されて今のYouTubeチャンネルのスタンスでいることと、同氏が常に時代に合わせて考えを「アップデート」できているこの柔軟さは決して無関係だとは思えません。

 

【第18回】『女は全員金目当て』


【第18回】『女は全員金目当て』

この衝撃的なタイトルですが、東野氏の発言ではなく、つい最近次女(通称:手下)が東野氏の枕元に置いた紙に書かれていたものとのこと。

中盤からの、娘Dが手下に中学時代に話した、およそその当時の年齢には見合わない芸能界に対するネガティブで達観した考えについてのエピソードがひたすらに面白い。

毎日のようにテレビで見かけるほどの売れっ子芸能人を父親に持つ家庭にあれば、同世代の子供より芸能界により大きな憧れを抱くパターンの方が多いのではないかという印象がありますが、むしろその逆で、多くの一般人の家庭の子供より芸能界の現実を知る機会が多いからこそ、このような達観した考えに至ったパターンでしょうか。

そういう背景も想像して楽しめる回です。

他にも、東野家の家族にまつわる回は突出して面白いものばかりなので必聴です。

 

 

おわり。